『朝の1ページ』
玄関を出て、吐く息の白さの濃度が増すと、いよいよ冬がはじまったんだなと実感を持つ。
「週に一回、朝の1時間だけでもシャッターを開けよう。」
そんな声で始まった、商店街の中の空き家のスペース活用。
着くと同時に淹れたてのコーヒーの香りが迎えてくれる、
朝のすっきりとした空気と混じり合って心地よい。
今日は、農家さんが朝採り野菜を販売してくれる。
まだ夜も明けきらないまわりが暗い中、収穫をしてくれた。
「おはよう、寒いね。しかし、おっきい白菜だね!」
話を聞きつけた近所の方やごみ出しを終えたついでと、入れ替わり立ち代り多くの人がのぞきに来てくれた。
白菜からブロッコリーをたくさん抱えて嬉しそうにこの場を後にする。
「もうすぐで仕事が終わるから、そしたら仲間と買いにくるわ。」
と、朝の仕事あがりのヘルパーさん。
ほぼほぼ野菜を売り切り、ひと仕事終えた農家さんがコーヒーを口にする。
湯気で眼鏡が曇ってはいるものの、その瞳の奥にはどこかホッとしたような表情が見え隠れしている。
今から出勤する人に仕事を終える人まで、どこか谷川俊太郎さんの「朝のリレー」を思い出させるような光景だ。
向こうは国境をまたいだ大きなスケールの朝のリレーだが、
ここにもわずか八畳ほどの商店街の一角に、暖かみのある小さな朝のリレーがある。
時刻は8時、「さあ、出勤するか。」
仕事場へと向かうメンバーの顔も今朝はどこかみずみずしい。
そう、それはさっきまでお店に並んでた朝採れ野菜のつやのように。
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